顔面神経麻痺に鍼治療を用いる前に知っておきたいこと

現代医学的な顔面麻痺治療の問題点

 顔面神経麻痺(ベル麻痺)で、ステロイドや抗ウィルス剤などの標準的な治療を行った後に、時間が経過しても思うように回復せず、このままの治療でよいのだろうかと、ご不安を感じられる方は多いと思います。

 また、現在処方されている薬をインターネットなどで調べてみると、単にビタミン剤や血流を改善する薬であったり、病院ではお医者さんからはこれといった治療法の提案のないまま、通院の間隔をあけられ、経過を観察するだけになってしまうというケースがよくあります。

 そして、現代医学的には積極的な治療策がないので、他の治療法を探し、最終的に鍼治療を選択される方が多いと思います。

 その際、自分の今の状態は鍼治療での改善の余地があるのかどうかや、治療を始めた場合、どれくらいの頻度でどれくらいの期間かかるのかという疑問もわいてくるでしょう。

 そこで、顔面神経麻痺の鍼治療を専門的に行っている私の経験から、鍼灸治療を受ける前に皆さまが知りたいことをまとめてみましたので、治療を受ける際のご参考になればと思います。記事の後半には実際の鍼治療例も載せておきました。

あなたの顔面神経麻痺の状態は、鍼治療で改善の余地があるかをチェックしてみてください

鍼治療で改善の余地のあるもの

  • 末梢性の顔面神経麻痺
  • ベル麻痺、ラムゼイハント症候群

  • 発症してからの期間が以下にあてはまる
  • 発症後2ヶ月以内のものは特に治りがよく、8ヶ月程度までなら改善することがよくあります。ただし、発症直後は現代医学的な治療が最優先なので、発症したらまず病院などを受診してください。なお、病院でのステロイド治療中も鍼灸治療を行うことは可能です。

短期間なら試す価値はあるが、基本的に改善が難しいもの

  • 中枢性の顔面神経麻痺
  • 腫瘍など脳の異常が原因で、手術が必要なもの

  • 先天性のもの
  • 発症してからの期間が以下にあてはまる
  • 発症後8ヶ月以上経過している方は、基本的には難しいことが多いですが、まれに改善するケースも存在しますので、1ヶ月半程度の短期間なら試してみる価値はございます

 では、治療期間や費用、顔面神経麻痺(ベル麻痺)に対する鍼治療の具体的な方法と考え方どのようになっているでしょうか?以下に続けてご紹介いたします。

鍼治療の頻度と回数の目安、軽度のものであれば数回で済むことも

通院頻度のめやす

 鍼灸師によって違いが出る所ですが、当院の場合では、鍼治療の頻度は週に1回程度になります。発症して約2ヶ月以内であれば、最初の4~5回は、可能な場合は2~3日間隔の通院を勧めています。発症後それほど時間が経過していない場合は高頻度で行うと改善しやすいことがあるからです。

 軽度のものであれば、数回の治療内に大幅な改善がみられますが、基本的に治療は1クール2ヶ月間を目安に行い、その間の治癒の度合いをみながら継続するか終了するかを決定していきます。

顔面神経麻痺の鍼治療に使用する鍼は、中国式や韓国式の太いものから、痛みを最小限に抑えた日本式のものまで様々

 私の鍼灸院では顔面神経麻痺の治療には日本式の痛みを最小限に抑えられるもののみを使用しています。また、電気鍼(低周波通電鍼)は行いません。鍼の太さも猫の毛ほどの極細のものです。

 鍼の種類は様々で、例えば中国式の場合は一般的に太いものが多くなります。鍼の痛みなどがご不安な方は、鍼灸院を選ぶ前に問い合わせてみるとよいでしょう。また、どこの鍼灸院でも現在は基本的に全て使い捨ての鍼を用いておりますので、衛生面でも安全です。

鍼

日本式の極細鍼。写真で確認しづらいほどの細さです。全て使い捨てのものなので衛生面でも安心。

顔だけでなく、全身の状態を改善することが肝心

 鍼灸治療を受ける場合は、顔への鍼治療だけでなく、全身的に治療をしてもらえるところがおすすめです。全身的に治療をする理由としては、多くの方が、発症前に仕事などが忙しくて疲労がたまっていたり、強いストレスがあったり、また、ご自分では気づいていない体全体の凝りや冷えが存在しているからです。

顔面神経麻痺のツボ

顔面神経麻痺の鍼治療に使用する顔面部のツボ

 顔は体の一部分ですので、その根となる全身の状態を改善することで、麻痺の回復を促進できると考えています。

顔面神経麻痺の鍼灸治療は古くから行われており、現在ではWHO(世界保健機関)のレビューにも掲載されている

 顔面神経麻痺の鍼治療は、WHO(2002年)の鍼灸の臨床試験報告レビューと分析によれば(※1)、「治療効果をみせることがあり、さらなる試験が必要とされるもの」と分類されており、研究途上であるものの、鍼灸治療が効果的であるとされています。

医学古典中に記載される顔面麻痺

古代の鍼灸学書である『黄帝内経』の中では「口僻、目不合(口がゆがみ、目を閉じたり開いたりできない)」という顔面神経麻痺と似た症状とその治療法が記載される。

 また、顔面神経麻痺は現代病ではなく、約2000年前の医学書にもたいへん近似した症状が治療法とともに記載されています。ステロイドの発明されていない時代では、鍼が主な治療手段であり、より効果的な治療のために、そういった時代の医学書を研究して現代に応用しているのも当院の特長のひとつです。

 次に実際の鍼治療例として、短期で治癒したものと、3ヶ月の治療で改善した例をご紹介します。

参考文献:※1『Acupuncture: Review and Analysis of Reports on Controlled Clinical Trial』(World Health Organization,2002年)

顔面神経麻痺の鍼治療例1 軽度のもので、短期で治癒した例

bell-case01

50代 女性 初回

  頭重感、足の冷えなどがあるため、直接的に顔面部への鍼の他、冷えをとる治療や、頭重感を緩和させる全身的な鍼灸治療を同時に行うということを治療の方針とした。

2回目(初回の4日後)

  たるんだ口元や眉毛の位置が少し上がってきたとのこと。物を食べるのも楽になる。

3回目(第2回目の4日後)

  口元の麻痺は改善。目の周囲にまだ違和感があり、まぶたは一重の状態、眉毛や額は多少動くようになるが、まだ完全ではない。足の冷えがとれる。

4回目(第3回目の1週間後)

  まぶたが二重に戻り、額や眉毛が問題なく動かせるようになった。

顔面神経麻痺の鍼治療例2 約3ヶ月治療を行い改善した例

bell-case02

30代 女性

 1ヶ月前に発症し、1週間ステロイド服用。眉毛を上に上げることが全くできない。口を横に開くことができない状態で、食事がしずらい。眼を閉じようとしても3mm程度隙間があいてしまい、涙が出る。現在はアデホスコーワとメチコバールの投薬治療のみ。

 週に1回のペースで治療を行い、1ヶ月ごには口が横に開くようになり、頬に力が入れられるようになり、食事で不自由がなくなったとのこと。

 その2週間後には眉を動かすことが可能になり、額に皺が寄るようになる。

 さらにその翌週には眼の状態が改善され、見た目の左右差がなくなり、涙も出なくなるが、眼を閉じる時の隙間はほぼなくなる。

 その後、さらに1月半ほど継続し、顔の強ばりが改善されるが、それ以上の大きな改善がみられないので終了。最終的には眼の周囲や口元が全く動かかなかったのが動かせるようになり、左右の顔のアンバランスも消失し、自然な状態になるまで回復した。

※施術の結果には個人差がございます。施術例は効果を完全に保証するものではなく、参考として掲載していることをご理解いただきますようお願いいたします。

顔面神経麻痺の部位や程度、全身の状態には個人差があるので、ひとりひとりに合わせた鍼灸治療を行うとよい

オーダーメイド治療

 鍼治療はステロイドなどの現代医学的な治療を行った後に残ってしまった麻痺に対して効果的です。

 顔面神経麻痺といっても、症状には人それぞれです。味覚障害のある方や、痛みや強ばりのある方、痺れなどの知覚の異常や違和感が頭の方にまで達している方、疲労やストレスによって増強する方。

 状態を考慮せず全ての顔面麻痺の方に一律で同じ場所に鍼を刺したままにして、一定時間寝かせておくだけのベルトコンベア式の治療を行う治療院もあるようですが、基本的に鍼灸師は初診時にじっくり話を聴き、ひとりひとりに合わせた治療を行うべきだと考えています。

 治療を受けるなら、断然レディメイド治療(既製品的な治療)ではなく、オーダーメイド治療がおすすめです。

 以上が鍼治療を受ける前に知っておきたいことのまとめでした。鍼治療がいいのはわかっていても、鍼そのものに対する恐怖心でお迷いの方や、今ご自分が行っている治療に疑問をお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

成鍼堂治療院 鍼灸師 宮下宗三

診療日・受付時間

鍼灸治療料金

初回:7,560円(鍼灸治療+初診料)

2回目より:5,400円

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