秋茄子は嫁に食わすなを本草学的に考える

東洋医学的栄養学   宮下宗三

なす

秋は茄子が最も美味な季節

 「秋茄子は嫁に食わすな」という言葉があります。

 秋は茄子が最も美味な季節なので、嫁いびりのために食べさせないという説と、茄子は身体を冷やすので嫁をいたわって食べさせないとする説があります。

 どちらが本当なのかはよく分かりませんが、本草学的に茄子はどう解釈されているのかを、『証類本草』や『本草綱目』といった本草書から調べてみました。

 まず、『証類本草』ですが、次のような感じで、やはり冷やす性質が身体に害になるということが記載されていました。

久冷の人は多食すべからず。人を損じ、気を動じ、瘡及び痼疾を発す。(『証類本草』巻二十九)

※痼疾は「久しく治らない病」のこと。

 次に『本草綱目』の編者の李時珍は、茄子の効用と、多食した時の害について次のように述べています。ここで注目すべきは「子宮を傷(やぶ)る」という部分で、本草学的にみて嫁にはよくなさそうな感じです。

 血を散じ、痛を止め、腫を消し、腸を寛げる。(『本草綱目』)

 時珍曰く按ずるに『生生編』に云く「茄の性は寒利。多食すれば必ず腹痛し、下利し、女人は能(よ)く子宫を傷(やぶ)る」と。(『本草綱目』)

 子宮を傷るなどと書かれると女性は食べる気がうせてしまうと思いますね。

 これに対する異論ももちろんありまして、日本の本草書の『本朝食鑑』では、茄子には実際にそういった重い中毒症状などはないが、冷やすので下痢の人にはよくないという程度に記載されています。実際に次のような感じで書かれています。

 然ども、当今我が国では、夏時から秋の末にかけて、生茄を食べないということはない。上下ともに嗜んで食べている。あるいは香の物として常食し、糟・醃・甘漬けにしては、春になって水に浸し、漬味を去ったものを和物とし、羮として食べて生のものにおとらないと誇っている。おいずれの場合にも、竟に無害であり、たとえ時節でなくても中毒はしない。惟下痢の者だけが、茄の性は寒利(寒のために下痢の生じること。寒痢)であるとして忌んでいる。(人見必大・島田勇雄訳注『本朝食鑑』平凡社・東洋文庫)

 また、この記載からわかるように、江戸期には火を通さない茄子を食べる習慣があったようで、現代と食べ方がちょっと違います。今は生で食べるのは、茄子の漬け物くらいでしょうか。

 さらに、茄子の毒を除く方法というのもありました。

 貝原益軒の『大和本草』という本なのですが、そこでは茄子の寒性をやわらげる方法として、茄子の皮を取り除いてからとぎ汁に半日浸し、よく煮て食べるとよいとしています。

 皮ヲ去切テ米ノ泔水ニ半日ツケヲキ毒氣ヲ厺テ後能煮熟シテ食スレハ味ヨクシテ寒冷ノ害ナク不損人。貝原益軒『大和本草』巻五

 茄子が健康を害する条件として、『証類本草』などでは「多食」というのをあげていますが、同じものを沢山食べ過ぎないというのがとにかく大事なようです。

 生食の場合は少し冷やす作用が強そうですが、火の通った茄子料理を秋にちょっと食べるくらいは問題なさそうですね。

宮下宗三(Sozo MIYASHITA)
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