本草学的にみたナッツ類の効果

東洋医学的栄養学   宮下宗三

クルミやアーモンドなどのナッツ類は、古くから世界各地で食べ続けられており、その健康効果はしばしば話題になるところで、最近の大規模な調査においてもナッツ類を食べると心疾患や呼吸器疾患などの死亡リスクが低下するということがわかっているようです※1。

このように、ナッツが健康によいというのは漠然と理解できますが、今回は本草学的な観点から、具体的にどのように考えられているかを調べてみました。

ナッツ類は本草学的にも健康食としておすすめ。

ナッツ類は本草学的にも健康食としておすすめ。

結論としては、呼吸器疾患についての効果は昔から考えられていたようで、他には胃腸に対する効果や、滋養作用について記載されていました。

ナッツ類全般が東アジアに入ってきたのはいつ頃からなのかは不明ですが、ナッツの中でも今回は古くから食べられているクルミや、アーモンドとピーナッツのみの調査しました。

※1:Bao Y, et al. “Association of nut consumption with total and cause-specific mortality” The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE. 2013

クルミ

『証類本草』中のクルミ

『証類本草』中のクルミ

本草書の代表格といえる宋代の『証類本草』では、胡桃について「肌を潤し、髪を黒くする。」と記載され、乾燥肌に対しての効果や、美髮効果などがあるようです。また、痔に対しても良いとされているのは意外な効果のひとつです。クルミの食べ方についても他の文献から引用されており、1日1粒から開始し、5日経過する毎に1粒ずつ食べる量を増やし、20粒食べるようになるまで続けるとよいとしています。

また、『証類本草』よりも後の時代の『本草綱目』では、「気を補い血を養う」とあり、滋養作用や、他にも喘息等の呼吸器に対する効果があげられています。

アーモンド

『本草綱目啓蒙』に外来の「アメンドウ」が『本草綱目』の「巴旦杏」にあたるとしている。

小野蘭山『本草綱目啓蒙』では外来の「アメンドウ」が『本草綱目』の「巴旦杏」にあたるとしている。(国立国会図書館蔵本)

江戸時代の本草学者である小野蘭山(1729–1810)は、『本草綱目』中の「巴旦杏」が「アメンドウズ」に相当するという解釈しています。効果としては『本草綱目』では「咳を止め、気を下し、心腹の逆悶を消す。」とあり、咳が続く場合に効果的です。食べ方としては、アーモンドのかけらが喉の刺激にならないように、よく咀嚼してから飲み込むとよいでしょう。

ピーナッツ

『本経逢原』には「長生果」の名前で記載される。

『本経逢原』には「長生果」の名前で記載される。

『本経逢原』という清代の文献では落花生は長生果の名前で掲載され、「能く脾胃を健やかにし、飲食の消運し難き者はこれに宜し。」とあるように、胃の働きや消化吸収を良くする効果があるようです。同じく清代の本草学書『本草従新』では「肺を潤し脾を補う」とあり、胃の働きを補う効果に加えて、肺を潤す効果が挙げられています。

『本草従新』や『脈薬聯珠薬性食物考』にはピーナッツの呼吸器に対する効果が記載されている。

『本草従新』や『脈薬聯珠薬性食物考』にはピーナッツの呼吸器に対する効果が記載されている。

また、清代の『脈薬聯珠薬性食物考』では、「生研すれば痰を下し、炒熟すれば味可なり。胃を開き脾を醒し、腸積を滑らかにして陊し、乾嗽は宜しく餐ずべし。燥を滋し火を潤す。」とあります。ここでも胃腸に対する効能の他に、乾燥を潤す作用によって、乾いた咳にも良いとされています。

小さいお子様はナッツは禁止、食べ過ぎると害になることも。適量を食べ続けることが肝心。

小さいお子様の場合はナッツをのどに詰まらせる死亡事故がおきる可能性がありますので、控えるようにしましょう。大人の場合でも、ナッツ類はしっかり咀嚼しないと喉に刺激になり逆に咳を誘発することもありますので、呼吸器系の症状によいとされていますが注意してください。

また、どんな物にも言えますが、食べ過ぎると効能が強く出過ぎて害になることもありますので、極端な量を摂るのは控えましょう。例えば、『備急千金要方』という文献には胡桃について、「多食すべからず。痰飲を動じ人をして悪心、吐水、吐食せしむ。」とあり、『脈薬聯珠薬性食物考』ではピーナッツを食べ過ぎると「痰を生ず」としています。

基本的には数粒ずつおやつ代わりに食べる分には健康増進のためにたいへん良いものだと考えられます。ピーナットなどは別名「長生果」とも呼ばれているくらいです。また、ナッツを購入する際は、食塩や油で煎られているものも多いので、不使用のものを選びましょう。