秋バテ解消の食事術と胃をいたわるツボ

秋バテの症状

夏が終わりに近づくと、胃の不調や体のだるさを主とした、さまざまな不快症状が現れることがあります。検査等で器質的な異常のないものは、夏バテと同様に、秋バテと言われます。そして、秋バテを解決するためには、胃をいたわることが大切であるというのは、皆さんもご存じのことでしょう。

この消化器としての胃は、東洋医学では「脾胃」と呼ばれています。

東洋医学的には、「脾胃」には食べ物の消化だけでなく、飲食物から得られた気を、全身に行き渡らせるための橋渡しとしての役割がある、と考えられています。そのため、この「脾胃」の不調は万病のもとになるとも言われています。

例えば、秋バテの主症状である体のだるさも「脾胃」と関係しており、鍼灸学の古典である『素問』の蔵気法時論という篇には、脾が病むことによって「身体が重くなる(身重)」という症状が現れるとあります。

また、太陰陽明論では、以下のような対話形式で、脾が病むとどういった症状が出るかが記載されています。

「脾が病んで、四肢がうごかせなくなるのは、どうしてでしょうか?」

「四肢は気を胃から受けますが、胃単独では四肢に気を行き渡らせることができません。必ず脾の働きによって、四肢は気を受けるのです。」(筆者による意訳)

※参考-『黄帝内経素問』(天宇出版社,顧従徳本影印)、原文等の詳細は末尾の注を参照のこと。

つまり、「脾胃」の不調により、体が重くなったり、四肢に力が行き渡らなくなってしまうわけです。体のだるさはやる気の低下にもつながりますので、秋から年末にかけて元気に乗り切るためには、猛暑で疲れきった「脾胃」をいたわってあげなくてはなりません。

では、具体的に「脾胃」をいたわるには、一体なにをすればよいのでしょうか?まず、飲食で気をつけるべき基本事項は以下の3つになります。

その1:飲み物は常温か、温かいものを

夏バテにも同じことが言えますが、冷たい物は「脾胃」にとって大敵です。夏と同じ感覚で冷たい物をとり続けると、気温の低下による外側からの冷えと、飲食物による内側の冷えで、「脾胃」は二重に苦しんでしまいます。

冷たい飲み物

冷たい飲食物を避ける

最近では外出先で飲料を購入する場合、常温のものも置いてあったりもしますので、お腹を冷やさないために、秋からはできればキンキンに冷えたものはやめて、常温のものを飲むと良いでしょう。

炎天下で大汗をかくお仕事や、スポーツをしている方などは別として、屋内で過ごすことが中心の場合は、むしろ温かい飲み物の方がよいくらいです。

その2:大豆食品、特に味噌汁が本草学的におすすめ

大豆は本草学的にみると、脾胃をいたわるのにぴったりの食材です※。特に温かい味噌汁は脾胃の働きをよくするのにおすすめです。大豆食品には豆腐や納豆もありますが、豆腐に関しては本草学的に冷やす性質があります。

ただ、『本朝食鑑』という江戸時代の書物では、豆腐は習慣的に食べている人には害がないとありますので、冷や奴などはもちろん控えた方が良いですが、冷やさずに大量に食べなければ問題ないでしょう。

※参考-「大豆食品の効能を江戸時代の文献より探る」:宮下宗三『江戸の快眠法』(晶文社),p142

その3:脾胃に遅めの夏休みをとらせる

胃にも休養を

夏に酷使された脾胃をいたわりましょう。

食欲が落ちて体重がどんどん減っていってしまうような方にはあてはまりませんが、ふだん食べ過ぎてしまう傾向にある方や、味の濃いものがお好きな方は、脾胃に負担をかけないために、普段よりも淡白な食事に切り替え、量も減らしていきましょう。

ひどい状態でなければ、3日間程度こういった量と質の調整を続けるだけで、脾胃の働きを回復することができるでしょう。皆さんにも夏休みがあるように、日頃の感謝をこめて、脾胃にも3日間くらいは仕事量を減らして休ませてあげましょう。

また、脾胃の休暇中は、以下にご紹介するツボにお灸をしてあげると、喜ばれるかもしれません。

脾胃をいたわるお灸のツボ

お灸の種類と壮数(つぼ一カ所につき)※

台座つき灸の場合:1-2壮

透熱灸の場合:3-5壮

※注-壮はお灸の数量詞で、1個2個ではなく、1壮2壮と数えます。

お灸の回数と日数

1日1回行います。脾胃をいたわりながら、最低3日から7日間程度連続して行いましょう。

お灸のツボ

秋バテのツボ、太白と三里

足三里(あしさんり)

膝の皿の外側の角から、手の平の幅と同じくらい下がった辺り。すねの骨の外際に取る。

太白(たいはく)

足の親指の付け根側面にある骨の出っ張りから、かかとに向けて少し下がったところ。骨の出っ張りを山とすると、山のふもと辺り

秋バテのツボ、章門と中脘

中脘(ちゅうかん)

みぞおちからお臍の中間点。

章門(しょうもん)

わき腹の辺りにある、肋骨のかどの下。

秋バテと東洋医学まとめ

秋が近づくと調子を崩してしまう方は、夏の飲食の不摂生による、脾胃の疲れが関係しているかもしれません。東洋医学的では、脾胃は食べたものを消化吸収し、全身に行き渡らせる機能があると考えられてるからです。

秋バテで体が思うように動かなかったり、全身的な倦怠感を改善するためにも、食事を改善したり、お灸をしてあげたりして、夏に酷使された脾胃をいたわってあげてはいかがでしょうか?

『素問』太陰陽明論

【原文】帝曰。脾病而四支不用。何也。岐伯曰。四支皆稟氣於胃。而不得至經(1)。必因於脾。乃得稟也。

【書き下し】帝曰く、脾病みて四支用いられざるは、何ぞや、と。岐伯曰く、四支は皆氣を胃に稟け、而して径(ただ)ちに至ることを得ず(2)。必ず脾に因りて、乃ち稟くることを得るなり(3)。

【校勘及び注釈】(1)『黄帝内経太素』は、「至經」を「俓至」に作る。(2)森立之は、新校正に引用される『太素』では「徑至」としていることから、「俓」は「徑」の俗字であり、「直」と解釈するとしている。ここでは、「徑」を「徑(ただ)ちに」と解釈した。(3)馬蒔は「胃氣自ずから四支の各經に至ること能わず。必ず脾氣の運ぶ所に因る。(胃氣不能自至於四支之各經。必因於脾氣之所運。)」としている。

著書紹介

難解な東洋医学を、やさしい家庭医学に!

快眠法・食事術・ツボ・衣服・運動など、東洋医学的養生法が丸ごとつまった一冊。

『江戸の快眠法 東洋医学で眠れるからだを作る』(晶文社)

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著者:宮下宗三

鍼灸師。成鍼堂治療院院長、新日本医師協会鍼灸部会学術部長、日本伝統鍼灸学会評議員。著書に『江戸の快眠法』(晶文社)、『鍼灸師・マッサージ師になるには』(ぺりかん社)がある。古文献にある東洋医学的な養生法を、現代人向けにわかりやすくアレンジしてウェブサイト上で発信している。イラストも手がける。

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