自律神経失調症や不定愁訴の鍼灸治療

宮下宗三
by宮下宗三

自律神経とは

自律神経は、体のさまざまな器官を動かしている神経です。その中でも、自分の意思で制御できない器官を動かすことから、この名前が付けられています。

例えば、内臓の動きは自分の意思でコントロールできず、自律神経に制御されています。仮に、心臓の動きが、手や足のように、自分の意思で停止できると大変なことになってしまいます。内臓は、自動で制御されているべきで、その役割を自律神経が担っているのです。

自律神経失調症と不定愁訴

この、自律神経は大きく2つに分けられます。ご存じの方も多いと思いますが、交感神経と副交感神経です。

それぞれの役割は、よく車のアクセルとブレーキに例えられます。交感神経がアクセルで、副交感神経がブレーキです。両者がうまく機能すれば、体は健康な状態を保てますが、自律神経が乱れると、過度な緊張状態が続いたり、リラックスしすぎた不活発な状態になってしまいます。

では、なぜ自律神経は乱れるのでしょうか。現在考えられている原因としては、ストレスが筆頭にあげられます。ストレスには、精神的なものや、気温差といった外的な刺激などがあります。労働と休息のバランスの悪さも、自律神経の乱れの原因です。

自律神経失調症と不定愁訴

また、自律神経の乱れによる症状は、不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれています。不定愁訴とは、頭痛、めまい、疲労感、睡眠障害、微熱感、動悸、しびれ感など様々な症状があるにも関わらず、検査で身体的な異常が見られないもののことです。

自律神経失調症と鍼灸

基本的に、現代人は精神的なストレスや、過重労働により、アクセルである交感神経が優位になりがちです。そのため、精神的なストレスを避けるようにしたり、労働と休息のバランスを見直すことが、自律神経を整えるために必要であると考えられています。

しかしながら、精神的なストレスも、労働時間も、気温差も、全て自分の外側から一方的に与えられるもので、常に容赦なくおそってきます。

では、こういった外部からくるストレスに、自律神経が乱された時、私たちはどのように対処すればよいのでしょうか。その方法のひとつとして、同じように外部からの刺激である、鍼灸療法はご存じでしょうか。

なぜ鍼灸がよいのか

緊張時に心拍数があがったり、気温によって心拍数が変化するのは、誰もが体験したことがあるでしょう。この心拍数は、自律神経の動きを観察するときにも使われます。

鍼をすると、その作用のひとつとして、心拍数が低下する反応が出ます。研究によれば、この反応は、交感神経と副交感神経を、お薬で抑制した状態では起きないようです。つまり、鍼による心拍数の低下は、鍼刺激が自律神経に何らかの影響を与え、調節された結果であると考えられています。

鍼治療が原因不明の症状に対して有効なのは、この自律神経を調整する作用があるためです。

古代にみる自律神経

実は東洋医学においても、古くから自律神経と似た概念がありました。それは、陰気と陽気と呼ばれる気の働きです。陰気は静的な気で、副交感神経に近いものです。夜に盛んになり、内臓と関わると考えられています。

また、陽気は動的な気で、交感神経に近い概念になります。日中に盛んになり、体表をめぐるとされています。そして、この陰陽の気のバランスや循環が崩れると、病を発症すると考えられています。

『医学六要』

中国明代の『医学六要』(国立公文書館内閣文庫所蔵本)には、ストレスなどにより、陽気が優位な状態が続くために不眠になると記載されている。

例えば、自律神経失調症の症状として代表的な睡眠障害は、東洋医学では陰虚陽実(いんきょようじつ)の状態とされています。言い換えると、陰虚とは副交感神経の働きが低下した状態で、陽実は交感神経優位のことになります。

西洋医学では、自律神経失調という概念は存在していますが、それに応じた治療法はまだ模索されている段階です。一方、東洋医学では、陰陽の乱れを治療する方法がすでに確立されています。

このようなわけで、自律神経失調症は、少なくとも現時点では、東洋医学的な治療が向いていると考えることができます。

まとめ

自律神経失調症は、交感神経と副交感神経の乱れによって、引き起こされます。症状は多岐にわたり、ストレスが主な原因と考えられます。対処法として最も理想的なのは、ストレスから離れることですが、ストレスは外側から一方的に与えられるものです。つまり、人間が社会や自然の中で生きていく上で、避けることができません。

自律神経が関係する症状は、前述した睡眠障害のように、古代の医学書にもみられます。ストレスは現代人特有の問題ではなく、人々は昔からストレスと付き合いながら生きてきました。

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台座付きのワンタッチ灸が、家庭でのセルフケア法として人気をあつめている

基本としては、自分に合ったストレス対策をみつけ、上手に付き合っていくことが大切なわけですが、その方法として、東洋医学や鍼灸を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。最近では、家庭でできる東洋医学的なセルフケア法として、お灸もたいへん人気があるようです。

著者:宮下宗三

鍼灸師。成鍼堂治療院院長、新日本医師協会鍼灸部会学術部長、日本伝統鍼灸学会評議員。著書に『江戸の快眠法』(晶文社)、『鍼灸師・マッサージ師になるには』(ぺりかん社)がある。

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