牡蠣(かき)は女性と酒飲みの強い味方

本草書で牡蠣の効果を調査

 東洋医学的にも牡蠣には様々な効果があります

 秋から冬にかけて食卓に並ぶ機会の増える牡蠣(カキ)。

 海のミルクとも言われ、グリコーゲンが豊富に含まれることから疲労回復によいとされていたり、なんと鉄分や亜鉛なども摂ることができます。

 漢方の世界でも牡蠣の名のついた処方が多数ありますが、この場合は専ら殻のことを指しています。では、東洋医学的にみて、牡蠣の肉の方にはどのような効果があるのでしょうか?

本草書に記載される牡蠣の5大効果

 肉の部分の効果については、今回もお馴染みの『証類本草』という本草書を調べてみました。

『証類本草』巻二十、蟲魚部

 本草書は薬物学的な内容になっているので、牡蠣についてはやはり殻の効能がメインでしたが、肉について触れている記載がいくつかありましたのでご紹介します。

 主な効果は簡単にまとめますと以下の5つです。

1.疲労回復

 本草書の中には「虚損」と記載されていて、現代同様に疲労回復効果が見込まれます。

2.胃腸を調える

 本草書中には「調中」と記載され、これは胃腸の流れをスムーズにするということです。

3.酔い醒まし

 ショウガとお酢で牡蠣を生食すると、飲酒後の火照りや喉の渇きを止めるとされています。

 飲酒によってアルコール分解に必要な亜鉛が消費されますが、なんとお酢に含まれるクエン酸は亜鉛の吸収を助けるとされていてるので、昔から伝わるこのお酢と牡蛎の組み合わせは大変理にかなっているということです。

4.美肌

 原文には「肌膚を細やかにし、顏色を美しくす」とあり、今風に言うと美肌効果があるということです。また、丹毒という重い皮膚病にも効果があると考えられていたようです。

5.女性の血気を調える

 女性にとって血気の不調和は子宮の働きなどを低下させる原因になりますが、牡蠣の肉はそれを調える作用があるとされます。

まとめ

 牡蠣は疲労回復以外にも美容効果や女性の体調を整えるのにも良いとされているようでした。飲酒時に食べるとよいというのはお酒好きの方にとっては嬉しい情報ですね。

 調理方法も豊富で飽きが来ない食材なので、秋から冬にかけての食卓のレギュラーメンバーにしてはいかがでしょうか?

追記

 牡蠣の効果についてもっと詳しく知りたい方は、以下に本草書の意訳と原文を載せておきますので、参考までにどうぞ。

陳蔵器説(陳蔵器は中国唐代の人で、『本草拾遺』の著者)

意訳:肉を煮て食べると虚損、婦人の血気、調中、丹毒に主に効果があり、生薑と醋につけて生食すると丹毒、飲酒後の火照り、のどの渇きに主に効果がある。

書き下し:肉煮食すれば虚損、婦人血気、調中、丹毒を解するを主り、肉薑醋中に於いて之を生食すれば、丹毒、酒後の煩熱・止渇を主る。

原文:肉煮食主虚損婦人血気調中解丹毒肉於薑醋中生食之主丹毒酒後煩熱止渇。

孟詵説(孟詵は中国唐代の人で、『食療本草』の著者)

意訳:火で炙って沸騰させ、殻を取り去って食べると甚だ美味である。人の皮膚を細やかにし、顏色を美しくさせる。

書き下し:牡蠣火上に炙り沸さしめ殻を去り之を食せば甚美なり。人をして肌膚を細やかにし顏色を美しからしむ。

原文:牡蠣火上炙令沸去殻食之甚美令人細肌膚美顏色。

『本草図経』説(宋代の本草書)

意訳:南人は其の肉を食用として、味はたいそう美味で、更に有益である。人の皮膚を細やかにし、顏色を美しくさせる。

書き下し:南の人は其の肉を以て食品に當て、其の味尤も美好、更に益有り。人をして肌膚を細やかにし顏色を美しからしむ。

原文:南の人以其肉當食品其味尤美好更有益兼令人細肌膚美顏色。

【参考文献】

唐慎微『經史證類大顴本草』台湾・正言出版社(柯氏本影印)

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著者:宮下宗三

鍼灸師。成鍼堂治療院院長、新日本医師協会鍼灸部会学術部長、日本伝統鍼灸学会評議員。著書に『江戸の快眠法』(晶文社)、『鍼灸師・マッサージ師になるには』(ぺりかん社)がある。古文献にある東洋医学的な養生法を、現代人向けにわかりやすくアレンジしてウェブサイト上で発信している。イラストも手がける。

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