東洋医学的子育て論-汗の処理の重要性や子どもの服装、外気浴ついて

 東洋医学にも小児科という分野があり、古い医学書にも独立した専門書がございます。今回は小児科の専門書である『小児衛生総微論方』から、現代にも通じる子育て論をいくつか紹介していきたいと思います。

1.汗の処理をおろそかにすると体を冷やしてしまう

 こどもは大人よりも汗をかきやすいため、発汗後に適切に処理をしないと、特に春の中頃から夏場はなかなか治らない汗疹(あせも)ができてしまいます。

 東洋医学的には、汗の処理は汗疹(あせも)の予防以外に、身体を冷やさないようにするために重要であると考えられており、まずはこどもの汗の処理の重要性について『小児衛生総微論方』からご紹介いたします。

【意訳】

常にこどもの状態を観察べきで、身体に汗をかいたままにさせてはいけない。もし汗をかくと、風や寒さの影響を受けてしまう。昼夜を問わずこれは慎むべきである。気候と衣服については詳しく知っておきべきである。また、粉を用いて汗を乾きやすくする。

【原文】

凡兒常當看覰消息。無令身體有汗。若汗出則至腠理虚而以受風寒。晝夜寤寐。皆當慎之。須審天氣冷煖。衣服厚薄。及以粉粉之。

【書き下し】

凡そ兒は、常に當に消息を看覰すべし。身體をして汗有ることを無からしむ。若し汗出でれば則ち腠理虚するに至りて以て風寒を受く。晝夜寤寐、皆當に之を慎むべし。須らく天氣の冷煖、衣服の厚薄を審らかにすべし。及び粉を以て之を粉す。

『小児衛生総微論方』巻二、慎護論

油断している夏の方が冷えやすい

 ここでの要点は、発汗後は身体が冷えやすくなるので、こどもの汗には常に気を配りましょうということです。

 特に現代では、夏場の方が注意が必要になります。なぜなら、汗が自然に蒸発する前に、クーラーで体温や気温を下げてしまい、そのため、汗が体表や衣服に留まりやすく、いつまでも身体を冷やし続けてしまうからです。

 冷やしすぎないために、こどもの衣服が汗で湿っていたらすぐ着替えさせましょう。夏場の睡眠時は、タオルを背中と下着のあいだにはさんでおき、発汗を確認したらそっとタオルだけ抜き取ると、こどもの眠りを妨げることもありません。

 また、夏場に汗で湿った腹巻きをして、余計にお腹を冷やしてしまうというケースもよくありますので、注意が必要です。

2.子どもの薄着はどのようにして慣らしていけばよいか

 東洋医学ではこどもには普段から薄着にさせるとよいと考えられています。

 その理由は、こどもは陽気が盛んで体温が高いので、過度に温めるとかえって害になるとされているからです。

 こどもに薄着をさせるというのは、最近の育児書などでも提唱されていて、その目安としてよく言われているのが、「大人よりも一枚少なく」になります。

 ただ、それぞれの季節の特性などを考えずに闇雲に薄着をさせてしまうと、逆効果にもなってしまうので、薄着のさせ方や季節に応じた服装についての部分をご紹介します。

薄着のさせ方

薄着のさせ方については以下のように記載されています。

【意訳】

薄着をさせるには、秋から慣らしていくとよい。春が来て暖かくなり始めたら、徐々に着る物を薄くしていかなくてはならない。すぐに着る物を減らして急に薄着をさせてはならない。風や寒さによってこどもの体調を崩させてしまわないようにするのである。

【原文】

薄衣之法。當從秋習之。若至來春稍暖。須漸減其衣。不可便行卒減。恐令兒傷中風寒。

【書き下し】

衣を薄くするの法、當に秋從り之を習すべし。若し春來りて稍暖かきに至れば、須く漸く其の衣を減らすべし。便ち行い卒に減らすべからず。兒をして風寒に傷中せしむを恐る。

『小児衛生総微論方』巻二、慎護論

薄着は秋からだんだんと慣らしていく

 真冬に急に薄着にさせたり、春になったら急に着る物を減らすと、かえって体調を崩しやすくなるので、気温が段々と低下していく秋から開始して適応させるということです。

東洋医学的に考える季節に応じた服装

『小児衛生総微論方』には、薄着のさせ方の他に、季節に応じた服装についての記載も以下のようにあります。

【意訳】

こどもは冬にはうなじを覆うような衣服を着せるべきである。夏にはわきの開いた服を着せるべきである。衣服は背中を覆うようにし、下着は体幹部を一周して縫製し、これによって風や寒さを防ぐのである。内蔵のツボはみな背中に存在しているからである。

【原文】

凡兒於冬月。須着帽項之衣。夏月須着背褡。及於當脊。更襯綴一重。以防風寒所感。謂諸藏之兪。皆在於背故也。

【書き下し】

凡そ兒は冬月に於いては、須らく帽項の衣を着るべし。夏月は須らく背褡を着るべし。當脊に及んで、更に襯は綴じること一重にし、以て風寒に感ぜらるを防ぐ。諸藏の兪は、皆背に在るが故を謂うなり。

『小児衛生総微論方』巻二、慎護論

冬は頚を冷やさないような衣服

 東洋医学では、頚を冷やすと風邪をひきやすくなると考えられているので、冬場は薄着をさせるとはいえ、頚周りの大きく開いた衣服はさけるようにしましょう。

夏はノースリーブの衣服

 夏場は熱気を発散させなくてはいけないので、ノースリーブの服や脇の開いた服を着せるようにしていたようです。

背中の大きく開いた衣服は着させない

 背中には内蔵の治療に用いるツボが沢山並んでいるのですが、背中の大きく開いた服を着ると、重要なツボを冷やしてしまうのであまり着させない方がよいでしょう。

3.東洋医学的にみた外気浴の効果

天気の良い日に外気浴を

 外気浴という言葉は子育て中のお母さんであれば誰でもご存じだと思います。天気の良い日を選んでこどもを抱いて部屋を出て外気に触れさせるということですが、東洋医学的でもこの外気浴は推奨されていて、以下のように記載されています。

【意訳】

 乳母は天気が良く風の無い日には、こどもを抱いて日中に遊ぶとよい。

 外気に触れさせ日光にあてれば、気血が充実し、皮膚が丈夫になり、寒さに強くなる。

 たとえば部屋にこもって、厚着させてばかりいると、日陰の植物のようになってしまう。日光にも風にもあたらなければ弱く損傷しやすくなるのである。

 こういうわけで『聖濟経』には「厚着させて暖かくしたり、部屋が密閉されていれば、ともにそれらを減らすべきである。(保護が)いきすぎると皮膚を損傷し血脈を害し、病弱になってしまう」とあるのである。

【原文】

凡乳母若遇天和無風之時。當抱兒在日中嬉戲。使數見風日。則血凝氣剛。肌肉硬密。堪耐風寒。若藏幃帳之内。重衣溫暖。譬如陰地草木。不見風日。則脆軟不任。易為傷損。故聖濟經言。重衣溫厚。幃帳周密。宜與減損。甚則傷皮膚害血脈。是多疾也。

【書き下し(ふりがな)】

凡そ乳母若(も)し天和し無風の時に遇えば、當に兒を抱きて日中に在りて嬉戲すべし。數(しばしば)風日に見(まみ)えしむれば、則ち血凝し氣剛く、肌肉硬密にして、風寒に堪耐す。若し幃帳の内に藏し、衣を重ね溫暖なるは、譬うれば陰地の草木の如し。風日に見(まみ)えざれば、則ち脆軟にして任(た)えず。傷損を為し易し。故に『聖濟經』に言く、重衣溫厚にし、 幃帳周密なれば、宜しく與(とも)に減損すべし。甚しければ則ち皮膚を傷(やぶ)り血脈を害す。是れ多疾なり。

『小児衛生総微論方』巻二、慎護論

 乳母が登場するあたり昔の医学書という感じがしますね。家の中で過保護にしすぎると日陰の植物のように弱くなるというたとえがわかりやすいです。

 東洋医学的な外気浴のポイントですが、天気の悪い日、特に風の強い日にはしないことです。東洋医学では強い風にあたることが体調を崩す原因のひとつと考えられているためです。

 丈夫な子に育てるためにも、天気が良く、無風の時にはぜひお子さんと外に出てみてください。最近は助産師さん等の専門家がどれくらいの時期からどれくらいの時間外気浴をさせるとよいかアドバイスをしてくださることもあるので、経験豊かな方々に色々と聞いてみてもよいですね。