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子育て中の親は必ず知っておいた方がよいアスベストのこと

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先日、地域の保護者向けにアスベストの小規模な講習会が開かれていたので、ちょど休みの日で時間も空いていたので参加してみました。親としてはかなりためになった講習会だったので、以下にレポートします。

6歳の子が今アスベストを吸えば30代半ば以降で中皮腫を発症する可能性が

アスベストをご存じの方は多いと思いますが、断熱や防音効果があり、防火対策に建築物などに多く使われてきた、たいへん身近な物質です。壁や天井に使われているのは、今お子さんをお持ちの世代の方でしたら誰もが見たことがあると思います。そんな身近な物質なのですが、吸い込むと根治が難しく予後の悪い中皮腫との関連がわかっていることも広く知られているところでしょう。

中皮腫はアスベストを吸い込んでから30年以上かかって発症することが多いようで、忘れた頃にやってくるというのも特徴で、例えば自分の6歳のこどもが吸ったら30代で発症していまうということになります。

また、大量に継続的に吸った場合はもちろんよくないわけですが、中皮腫に関してはこれ以上吸ったら危険という閾値がないという考えもあるようで、少量でも中皮腫を発症する可能性は否定できません。できればアスベストは吸わないようにしたいですね。講習会ではいかにしてアスベストのリスクを軽減するかの講義がなされましたので、覚えている範囲でまとめてみました。

アスベストを吸えば全員が必ず中皮腫を発症するわけではない

実は、小学生のころ、モップの先で教室の天井をつついてアスベストが削れ落ちてくるのを面白がっているクラスメートがいて、たぶん僕も当時のクラスメートや先生方もそこそこ吸っていたと思います。

もうすぐその頃から30年経過しますが、今の所なんの問題も無くすごしています。どうやらアスベストは吸えば必ず発症するというわけでもないようで、ほとんどの方は大丈夫とのことです。昔吸ったことがあるからといって、無駄にパニックにになることもありません。

ただ、厚生労働省によれば、2014年のデータでは1376人が中皮腫によって死亡したとのことで、今後は右肩上がりに増えていくと予測されています。また、アスベストは肺癌を引き起こす原因にもなるようですが、肺癌は様々な要因で発症し、アスベストが直接的な原因と断定できないため、正確な統計はとれていません。実際は中皮腫による死亡者の2倍から6倍の肺癌での死亡者が出ているかもしれないとのことで、アスベストを吸わなければ無駄になくなることのなかった命がこれだけあり、これからも増え続けるというわけです。

運が悪ければ自分や自分達のこどももその数字の中に入ります。

アスベストの予防策はこのように。因果関係はわかっているので、子どもに余計なリスクを背負わせないように

このように、吸っても発症する確率が低いからとはいえ、中皮腫になってしまえば命が助かる確率も低いので、無駄なリスクを負わないためにも、できれば今後吸わない、吸わせないようにしたいものです。

講習会では予防策も色々と紹介されていましたが、主なものとしては、アスベストを飛散させない、アスベストに近寄らない、飛散した場合は吸わないの3点があります。

1.飛散させない-解体工事や内装工事で飛散する-

今後自分の子ども達がアスベストに曝(さら)される大きな原因のひとつが古い建物の解体や内装工事です。

アスベストと言えば、天井や壁に吹き付けられているあの白いやつを思い浮かべるでしょうが、部屋の表面にはなくても天井裏に使われていたり、また、アスベスト含有の建材も多くあります。

吹きつけのものでなければ通常は容易に飛散しないようですが、それ以外のアスベスト含有の建材は、壊すときに飛散するのが問題となります。

そのため、工事の際は現在アスベストの調査が義務づけられ、アスベストがある場合は、アスベストを飛散させない工事の方法が取られているようです。すでに法令もあるようで、守ってもらえているのであばそれほど気にする必要はないかもしれません。

ただ、ここで問題なのは法令は必ずしも守られていないという現実があるということです。故意によるものはもちろんいけませんが、アスベスト建材に気づかないで解体工事をしてしまうということも存在しているとのことなのです。

例えば、2015年の東京都の例が紹介されていました。ウェブサイトに報道発表資料があったので以下に引用します。

 東京都住宅供給公社(以下「公社」という。)は、都営住宅の営繕工事業務を東京都から受託しています。今般、天井部分に吹付けられたひる石にアスベストの含有が確認されている都営住宅において3件(3戸)のあき家補修工事を行った際、法(※1)及び条例(※2)で義務付けられた届出を行わず、また、工事業者は、法令(※1※2※3)で義務付けられた飛散防止対策をとらずに天井の一部の吹付け材を撤去し、更に法(※4)に定められた適正な廃棄物の処理を行っていなかったことが判明しました。

都営住宅あき家補修工事におけるアスベスト含有建材(天井吹付けひる石)の不適切な取扱いについて

公共事業ですらこのような状態なので、民間だとどうなのかとちょっと心配になりますね。では、アスベストを飛散させないために、僕のような建築や環境関係ど素人の一般人がどのように対処すべきなのでしょうか?

その方法はすごくシンプルです。例えば、自分の家の目の前の建物や、子どもの通学路で古い建物の解体工事が始まりそうになったとします。とりあえず住所など場所の特定できる情報をメモしておいて、あとは自分の住んでいる地区の役所にある環境関係の部署に問い合わせるだけです。

通常ですと、これで調査が入るとのことで、不適切な場合はもちろん法令がありますから工事を中断させたりもできるとのことです。それでも心配な場合は「中皮腫・じん肺・アスベスト センター」などに問い合わせるとより専門的な調査を行ってくれることもあるようです。

中皮腫・じん肺・アスベスト センター

2.アスベストに近寄らない-学校の内装工事なども注意。公共施設でも使われている事が多い-

アスベストは飛散しないようにしてもらうのがいちばんですが、もうひとつの予防法としては近寄らないというのがあります。

意外だったのが内装工事に近寄らないということです。身近な例ですと、駅ビルのテナントが変わる際、壁だとか天井をいじれば天井裏や壁にアスベストが使われている場合はもちろん飛びますので、ビル全体に空調などを通じて飛散することもあるとのことです。

また、アスベストは学校を含めた公共施設で使われていることも多く、例えば老朽化した小学校の一室を内装工事するとなった場合は、学校にアスベストの有無を確認したり、アスベストが含有されている場合は児童・生徒が利用しない時期にやってもらい、近づかせないような対策を取ってもらう必要があります。幼稚園において園児がアスベスト曝露にあった例も紹介されていました。

3.飛散した場合に吸わない-解体工事だけでなく、震災後の曝露に注意-

N95

アスベストはN95のマスクを正しく装着しないと防げない

実際に飛散してしまった場合は、吸わないようにしなくてはなりません。その際、マスクが活躍するわけですが、通常の花粉やかぜの時に装着するものではだめなようで、N95という性能基準を満たしたマスクである必要があります。

今後は解体工事だけでなく、大地震の発生による建物の倒壊によってアスベストが飛散することもあるとのことで、N95のマスクは家や職場に常備し、外出の際は携帯することを勧められました。僕は早速バックの中に入れて持ち歩いています。

建物の解体工事は2028年がピーク。アスベストは過去の問題ではなく、これからの若い世代の問題。

以上が講習会のレポートでした。実は今僕が住んでいるマンションの目の前に古い工場があって、その屋根にこの講習会で紹介されていた波形スレートというアスベストが含まれている可能性が非常に高い建材が使われているので、今後取り壊しの際に注意しなくてはと思いました。

前述したように、今自分の子がアスベスト曝露すれば、運が悪ければ30年後に中皮腫になってしまうかもしれません。30代半ばということは忙しく働いているかもしれませんし、結婚して子育て中かもしれません。

国土交通省の推計では建物の解体工事は2028年をピークに今後増え続けるとのことなので、アスベストは過去の話ではなく、今後大きな問題となり得るもので、若い世代ほど今から気をつけるべきものなのです。

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