突発性難聴後の耳鳴りや耳閉感への鍼灸について

宮下宗三
by宮下宗三
耳鳴り・耳閉感と鍼灸

 突発性難聴は、高度の難聴が急激に進行する病です。標準的な治療は、お薬を1週間から2週間程度服用するか、入院しての点滴治療になることが多いでしょう。

 初期の標準的な治療によって、全ての耳の症状がよくなればよいのですが、病院では、検査のしやすい聴力の回復を基本的な目標としています。そのため、随伴症状としての耳閉感や耳鳴りについては、あまり積極的な治療をしてもらえないのが現状です。

 耳閉感や耳鳴りは、集中力を低下したり、気分を落ち込ませたり、日常生活に大変大きな支障をきたしてしまいます。こういった症状がのこってしまった場合は、どのようにすればよいのかお悩みの方は多いと思いますが、東洋医学的な治療手段はご存じでしょうか?

 これから、耳閉感や耳鳴りといった症状に対する別の治療法として、東洋医学的治療である、鍼灸についてご説明いたします。今とは違った手段をお探しの方は、どうぞご参考にしてください。

東洋医学と耳鳴り・耳閉感

 耳の症状は、東洋医学では大昔から治療の対象とされてきました。例えば、約2000年前の鍼灸関連の医学書である『黄帝内経』には、耳鳴りや難聴に対して有効な経穴(ツボ)についての記載がみられます(※1)。

突発性難聴に対するWHOの見解

 また、現代の一般的な評価としては、WHO(2002年)の鍼灸の臨床試験報告レビューと分析に(※2)、突発性難聴(sudden-onset deafness)について、難聴は通常医療での治療が困難なことがあり、鍼灸治療を行う価値があるとしています。

 つまり、これらの耳の症状は、昔から東洋医学の適応範囲内のものであり、本来なら積極的に用いられてもよいはずのものです。では、実際に鍼灸院ではどのように治療をするのか、当院の考え方をベースに、以下にご紹介いたします。

突発性難聴の後遺症への鍼灸について

総合的な治療

 突発性難聴など耳の症状の原因は、ウィルスであるという説が有力です。また、耳鳴りや耳閉感などの後遺症に関しては、循環障害が一因であると考えられています。

説明するまでもなく、多くの方は鍼灸治療が血行を良くするということを、すでにご存じだと思います。そして、耳の治療の際も、耳周囲の循環をよくするための治療が行われます。

 この場合、耳の周囲へ沢山の鍼をするというイメージがあると思いますが、場合によっては、全身的な治療が重要になることがあります。

 その理由は、循環障害は部分的に発生するのではなく、全体的な症状のひとつだからです。

 例えば、冷えのぼせの症状がそれです。冷えのぼせは、手足などの末梢が冷えて、頭がのぼせる症状です。足などの末梢の循環が悪いため、本来足へ流れていくはずの血流が、体の上の方へ集中し、その結果、頭部へ過度に負担がかかり、頭がのぼせたり、重い感じになるというわけです。

 つまり手足などの部分的な循環障害が、他の部位へ影響している場合があるのです。

めまいの治療には手や足にも鍼灸をして全身をととのえる。

 そのため、当院では、耳の治療の際は、頭部全体の循環改善を目的として、まず手足やお腹、背中などへ、全身的な治療を行います。

 全身治療後は、患部の治療へうつります。突発性難聴を訴える方の多くは、耳の周囲や、肩や首の過度な緊張がみられます。全身治療に加え、こういった肩や首や、耳周囲の緊張をやわらげることで、耳の症状を軽減させていくというわけです。

突発性難聴や耳鳴りの鍼灸治療期間

 治療を開始するタイミングですが、やはり現代医学な治療と同じく、早期に開始される方が、短期間で治癒していく傾向にあります。逆に、慢性化した耳鳴りは治りが悪いことが多く、あまり改善されないまま鍼灸治療を中止する例もございます。治療期間の目安としては、通常は週に1~2回の頻度で、2ヶ月程度みていただくことが多いです。

細い鍼を使用し、ソフトな治療を行います

成鍼堂方式のの突発性難聴治療

 鍼灸には色々な流派がありますが、当院の行っている治療は、少数のツボを使用し、 鍼を浅めに行う低刺激な方法です。鍼が初めてで怖いという方も多くいらっしゃいましたが、皆さま安心して治療をお受けになれています。

 治療は必ず個別に対応し、体を鍼山のようにして、数十分寝かせておくような治療は行いません。

 また、使用する鍼については、太い鍼を使った治療は、痛みによってかえって緊張を招くことがあるため、当院では、中国式の太い鍼は用いず、日本式の鍼先の繊細な極細のものを用いています。

 このように、当院では、普段鍼治療を受けたことのない方でも、安心して治療を受けられるような工夫をしております。

耳鳴り・耳閉感の症例

参考文献

※1『重廣補注黄帝内経素問』(台湾・天宇出版社,顧従徳本影印)

※2『Acupuncture: Review and Analysis of Reports on Controlled Clinical Trial』(World Health Organization,2002年)

著者:宮下宗三

鍼灸師。成鍼堂治療院院長、新日本医師協会鍼灸部会学術部長、日本伝統鍼灸学会評議員。著書に『江戸の快眠法』(晶文社)、『鍼灸師・マッサージ師になるには』(ぺりかん社)がある。

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