鍼灸によるめまいの施術について

宮下宗三
by宮下宗三

めまいには、立っていられないほどの強い回転性のものや、体が瞬間的にグラッと揺れる感覚や、常時フワフワとしていたりと、色々な種類があります。

原因がはっきりとしためまいの場合はよいのですが、めまいには原因が不明なものも存在するようです。

そのため、お薬も効かないままの状態で慢性化し、このまま続いてしまったらどうしようと、途方に暮れてしまっている方は多いのではないでしょうか。

めまいと東洋医学

このような慢性化した、原因のはっきりとしないめまいには、西洋医学以外を選択して解決するケースもあり、漢方などの東洋医学を利用する方もいらっしゃるでしょう。

成鍼堂治療院では、東洋医学のひとつである鍼灸を専門に行っておりますが、めまいに対して鍼灸をお考えの方はまだ少ない印象です。また、情報が少ないため、本当に鍼灸を選択してよいのか、お迷いのことと思います。

3つのタイプのめまい

そこで当記事では、めまいに鍼灸をご検討中の方や、他の方法をお考えの方に、鍼灸が向いているタイプのめまいや、どのようにして施術を行っていくかを、以下にご紹介いたします。

3つのタイプのめまいと鍼灸

1.頚や肩の筋緊張をともなうめまい

首と関係するめまいの場合に圧痛の出やすい場所

原因不明のめまいのひとつに、肩こりや首のこりからくるものがあります。実際に、ご自分の耳たぶの下あたりから、首の付け根まで、指で順番に押して確認してみましょう。こりの強い場合は、指が押し込めなかったり、押すと痛かったりします。

椎骨動脈の圧迫により頚性めまいが引き起こされる

解剖学的には椎骨動脈という動脈が、首の骨にある小さな穴を通り、脳底動脈という脳の動脈につながります。頚椎症などによって、この動脈が圧迫されてしまうと、めまいを引き起こします。つまり、頚椎症を緩和し、循環をよくすることが、めまいを緩和させるために必要になります。

このような、頚の異常が関係する場合は、頚性めまいと呼ばれることもあるようです。

医学古典中のめまいの記載

古代の医学書にある目眩(めまい)の記載。

実は東洋医学でも、古くから首との関連が考えられており、約2000年前に成立したとされている、古代の医学書『黄帝内経霊枢』中にも記載があります。

また、頚部の緊張と精神的な緊張は、連動していることが多いため、ストレスの強い方の場合は、首を楽にすることで、精神的にリラックスできやすくもなります。

2.めまいと自律神経の乱れ

 めまいの原因のひとつとして、自律神経の失調が考えられていますが、実は鍼灸には自律神経を調節する働きがあります。

 当院では全身的に低刺激な施術をすることが、自律神経の働きを調節できると考えており、めまいの場合でも耳や首の周囲だけでなく、全身的な調整も行っていきます。

 自律神経が乱れると、めまい以外にも、動悸や呼吸の浅い感覚、睡眠障害、胃腸の働きの低下、冷えなどが症状として現れます。また、更年期のめまいにも、ホルモンや自律神経が関わっていることが多く、全身をととのえることで対処していきます。

3.血行不良とめまい

 東洋医学的なめまいの原因として、血行不良が考えられています。この血行不良は部分的に発生するのではなく、患部である耳や頭部に加え、手足など末梢の循環不全を伴っている場合もあります。

 鍼灸には一般的に、血流をよくする作用があると知られていますが、この作用によって回復が促進されると考えられるわけです。

めまいの施術には手や足にも鍼灸をして全身をととのえる。

 また、東洋医学では、全身はつながっていると考えておりますので、耳や頭の血行を根本的に整えるために、手足の循環も同時によくしていきます。そのため、施術はめまいとは関係のなさそうな場所にも、全体的に行われなければなりません。

期間や頻度の目安

発症直後で、症状が強い場合は、1日でも早い日常生活への復帰のために、数日おきの高頻度の施術をおすすめしています。

発症して日数が経過し、慢性化している場合は、継続的な刺激を優先する方がよいため、負担にならないよう、皆さまのご都合に合わせて調整しています。

基本としては、週に1回程度の頻度で、6週間を1クールとして経過をみていきます。順調な場合は1クール以内に終了します。なお、全ての方に効果がでるわけではなく、特に慢性化してからの時間が長い場合は、効果の出ないまま中止することもございます。

まとめ

極細の日本式鍼

痛そうなイメージがありますが、実際の鍼はこのような猫の毛のように細いものです。

鍼を刺すという行為に恐怖心をお持ちの方も多く、鍼灸はまだ選択肢として入りづらいことが多いと思いますが、実際の鍼は猫の毛ほどの細さで、痛みもそれほど気にならないというご感想をいただくことがほとんどです。

鍼灸は原因不明のめまいにおいて、自律神経、首の緊張、血流と関係する場合に適応となると考えておりますので、慢性化してなかなか良くならない場合は、いつでもご相談ください。

参考文献

  • 『症状の起こるメカニズム』 (JJNブックス,1995)
  • 『黄帝内経霊枢』(明刊無名氏本)
  • 『トートラ人体の構造と機能』(丸善,2004)
著者:宮下宗三

鍼灸師。成鍼堂治療院院長、新日本医師協会鍼灸部会学術部長、日本伝統鍼灸学会評議員。著書に『江戸の快眠法』(晶文社)、『鍼灸師・マッサージ師になるには』(ぺりかん社)がある。

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