緊張型頭痛・偏頭痛に対する鍼灸治療の実際

厚生労働省-国民生活基礎調査にある頭痛の好発年代

厚生労働省の国民生活基礎調査(平成28年)よれば頭痛は男女ともに20代から50代の現役世代の方に多く、特に女性の場合は自覚症状の5位内に入っています。

頭痛はこのように現役世代の方に特に多い症状ですが、人生で最も活動的になるこの時期に、頭痛によってさまざまな制限をされてしまい、痛みが出るたびに鎮痛薬などを服用してしのぐ生活から抜け出したいとお思いの方も多いことでしょう。

治療はお薬によるものが一般的で、ほとんどの頭痛に効果を発揮すると思いますが、お薬を使わない東洋医学的な治療は皆さんご存じでしょうか。

東洋医学的な治療には漢方と鍼灸がありますが、ここでは私の専門である鍼灸による頭痛の予防治療についてご紹介します。

頭痛には一次性頭痛と二次性頭痛に大きく分けられますが、東洋医学が効果を発揮するのは一次性頭痛です。では、この一次性頭痛とはどういったものなのでしょうか。

一次性頭痛に効果的な鍼灸

頭痛の分類

頭痛といっても種類や原因はさまざまで、脳腫瘍、眼の疾患、鼻疾患、耳の疾患などと関わるものがございます。こういった器質的な病気による頭痛は二次性頭痛と呼ばれていて、頭痛のお持ちの方は市販のお薬などを服用するだけでなく、まずは病院などで鑑別してもらう必要があります。

一次性頭痛は器質的な病気が原因でない頭痛で、機能性の頭痛とも呼ばれています。慢性頭痛のほとんどがこの一次性頭痛になり、鍼灸治療が効果を発揮するのはこのタイプの頭痛です。

この一次性頭痛は大きく緊張型頭痛と偏頭痛に分けられますので、以下にそれぞれご説明します。

緊張型頭痛の病態

緊張型頭痛とは、筋の異常な緊張により、血流の障害や、神経を圧迫することで引き起こされる頭痛で、鈍痛が長期間続いたり、疲労に伴って症状が強まったりします。

緊張型頭痛の原因

頭痛の範囲は全体的で、首肩や後頭部付近のこり感を伴うことが多く、症状は片頭痛と違い両側に出ることがほとんどです。

筋の疲労は長時間同じ姿勢でいることが引き金になるので、できるだけ連続した作業を避けるようにする必要があります。厚生労働省の労働衛生管理のガイドラインでは、パソコン等の連続作業時間は1時間をこえないようにし、作業と作業の間には10分から15分程度の休み加え、さらに連続作業中にも小休止を設けるようにとありますが、これを完全に守れないにしても、意識して小休止をとることをおすすめします。

緊張型頭痛には鍼灸で首肩や後頭部付近の緊張を緩和させる

このタイプの頭痛は、筋緊張を緩和させることで痛みが軽減しますので、緊張の強い筋肉を特定し、それらへ鍼やお灸で刺激を与えて緩めていきます。

緊張型頭痛と筋肉、ツボの関係

頭痛と関係する筋肉としては、僧帽筋、板状筋、肩甲挙筋、菱形筋などの、後頭部から肩や背中にかけての筋肉です。また、のどの両わきから鎖骨へかけてつながる胸鎖乳突筋も頭痛と関係することがあり、これらの筋の状態をしっかりと把握して治療をしなければいけません。

また、それらの筋肉と関係の深いツボは首や肩だけでなく、腕などにも存在しているので、全身的な刺激がより効果的です。

緊張型頭痛は鍼灸治療で治りやすいタイプの頭痛です。緊張している筋肉が特定できれば、それを緩めるだけで効果が出ることが多いので、家庭でのお灸などで行うセルフケア指導だけでもある程度コントロールすることもできます。

偏頭痛の病態

偏頭痛は血管性の頭痛で、血管の拡張や、三叉神経が関係していると考えられています。症状はドキドキとした拍動性の痛みで、徐々に強まっていき、数時間から数日継続します。また、吐き気や嘔吐をともなうことが多く、頭痛のピーク時には何もすることができないくらいのつらさがあります。

偏頭痛への予防的な鍼灸治療

偏頭痛に対する鍼灸治療は頭痛発現時の痛みの抑制よりも、予防が主体になりますが、東洋医学的には偏頭痛をどのようにとらえているのでしょうか。

東洋医学的な頭痛の分類の中に「厥頭痛(けつずつう)」というものがあります。この「厥頭痛」とは、末梢の循環障害をともなう頭痛のことです。東洋医学では末梢の血のめぐりが悪いと、本来手足に循環するはずの血が行き場を失い、頭部に集まってしまうと考えられています。つまり、頭部の血流量が過度になり、頭痛を引き起こすというわけです。

偏頭痛と厥頭痛のメカニズム

治療法としては、手や足などの末梢の循環改善をして、頭部の血管の負担を軽くする方法がとられます。また、同時に、偏頭痛と関係の深い三叉神経と関連するツボを刺激し、症状を軽減していきます。

この三叉神経とは、最も太い脳神経で、その名の通り3本に枝わかれし、それぞれ眼神経、上顎神経、下顎神経と呼ばれています。偏頭痛の起きているときに眼の奥に痛みや重さを感じるのは眼神経の影響と考えることができます。

片頭痛の予防に関する鍼灸治療のエビデンス

コクラン共同計画という科学的根拠(エビデンス)に基づく医療情報源を提供している世界的な組織があるのですが、そのレビューによれば、2016年までに行われた合計4985名に対して行われた22件のランダム化比較試験を調査分析したところ、片頭痛の予防に対して鍼治療は少なくとも予防薬と同等か、それ以上の効果があると認められ、患者の治療の選択肢として考慮にいれることができるとしています。

頭痛に対する治療に鍼灸は保険が使えないので、コスト面ではお薬の方が利用のしやすさとしては上になりますが、薬と同等の予防効果があるのでしたら、副作用の心配のない鍼灸を利用するほうが体にはよいと考えられます。服薬並のコストとなると太刀打ちできませんが、当院では東洋医学的なセルフケアで通院回数を減らし、経済的な負担を軽くする方法も現在模索中です。

お薬に頼りたくない方や、お薬が使えない状態の方に鍼灸はおすすめです

鍼灸治療が向いている頭痛

頭痛の治療は、鎮痛効果という面では、お薬を服用する方が手軽で効果も高く、うまく服薬できれば日常生活に支障をきたすことはほとんどないでしょう。

ただ、緊張型頭痛や偏頭痛の予防を求めている方や、お薬の服用に抵抗のある方、お薬が服用できない状況の方に対しては、鍼灸治療がお役に立つことができます。

実際の治療効果としては、緊張型頭痛の方が治りがよく、偏頭痛の場合は軽度の場合は予防可能ですが、慢性化してなおかつ重度の場合は頻度が半減する程度の効き具合のこともございます。いづれにせよ、服薬回数は減らすことができますので、鍼灸とお薬をうまく使いながら頭痛をコントロールしていくことができます。

実はこの記事を書いている私も以前は嘔吐をともなうほどの激しい偏頭痛もちでしたが、自分を実験台にして治療法を研究し、今では嘔吐することもなく、毎週末におきていた頭痛も年に数回かぜをひきそうな時になる程度になりました。以下にその経験も書い記事をご紹介しますので、偏頭痛をお持ちの方はぜひご覧ください。

偏頭痛持ちの鍼灸師が自分を実験台にして症状を克服した記録

また、当院では、個人の状態に合わせた家庭でできるセルフケア法も治療後にお伝えしています。緊張型頭痛に効果の出やすいツボとその刺激法についてはこちらに詳しく書いております。

肩こり頭痛解消のツボ刺激法

参考文献

  • 『国民生活基礎調査』(厚生労働省,2016年)
  • 『鍼灸臨床最新科学』(医歯薬出版,2017年)
  • 『トートラ人体の構造と機能』(丸善,2004年)
  • 『新版経絡経穴概論』(医道の日本社,2009年)
  • 『黄帝内経霊枢』(日本内経医学会,明刊無名氏本影印)
  • 『症状の起こるメカニズム』(医学書院,2009年)
  • Acupuncture for preventing migraine attacks, Cochrane Database of Systematic Reviews, 2016, issue6.