緊張型頭痛や片頭痛に対する鍼灸

宮下宗三
by宮下宗三
厚生労働省-国民生活基礎調査にある頭痛の好発年代

頭痛は現役世代の方に特に多い症状で、人生で最も活動的になるこの時期に、つらい痛みによって様々な制限をされてしまいます。

治療はお薬によるものが一般的ですが、お薬を使わない東洋医学的な方法は皆さんご存じでしょうか。

これから東洋医学的な施術法として、私の専門である頭痛の鍼灸について解説させていただきます。

頭痛には一次性と二次性に大きく分けられますが、東洋医学が向いているのは一次性です。では、この一次性頭痛とはどういったものなのでしょうか。

一次性頭痛と鍼灸

頭痛の分類

頭痛といっても原因が複数あり、例えば脳腫瘍、眼・鼻・耳の疾患によるものがございます。こういった器質的な病気によるものは二次性頭痛と呼ばれ、安全のために、自己判断で市販薬を服用するだけでなく、病院で鑑別してもらう必要があります

一次性頭痛は器質的な異常のないもので、機能性の頭痛とも呼ばれています。慢性頭痛のほとんどがこの一次性になり、鍼灸が向いているのはこのタイプです。

この一次性頭痛は大きく緊張型と片頭痛に分けられますので、以下にそれぞれご説明します。

緊張型頭痛の病態

緊張型頭痛とは、筋の異常な緊張により、血流の障害や、神経を圧迫することで引き起こされる頭痛で、鈍痛が長期間続いたり、疲労に伴って症状が強まったりします。

緊張型頭痛の原因

症状の出る範囲は全体的で、首肩や後頭部付近のこり感を伴うことが多く、片頭痛と違い両側が痛むことがほとんどです。

筋の疲労は長時間同じ姿勢でいることが引き金になるので、できるだけ連続した作業を避けるようにする必要があります。厚生労働省のガイドラインでは、パソコン等の連続作業時間は1時間をこえないようにし、作業と作業の間には10分から15分程度の休み加え、さらに連続作業中にも小休止を設けるようにとあります。これを完全に守れないにしても、意識して小休止をとることをおすすめします。

鍼灸で筋緊張を緩和させる

このタイプは、筋緊張を緩和させることで痛みが軽減しますので、緊張の強い筋肉を特定し、それらへ鍼やお灸で刺激を与えていきます。

緊張型頭痛と筋肉、ツボの関係

症状と関係する筋肉としては、僧帽筋、板状筋、肩甲挙筋、菱形筋などの、後頭部から肩や背中にかけての筋肉です。また、のどの両わきから鎖骨へかけてつながる胸鎖乳突筋も頭痛と関係することがあり、筋肉の状態をしっかりと把握して施術をしなければいけません。

また、これらの筋肉と関係の深いツボは首や肩だけでなく、腕などにも存在しているので、全身的な刺激を行います。

片頭痛の病態

片頭痛は血管性の頭痛で、血管の拡張や、三叉神経が関係していると考えられています。症状はドキドキとした拍動性の痛みで、徐々に強まっていき、数時間から数日継続します。また、吐き気や嘔吐をともなうことが多く、痛みのピーク時には何もすることができないくらいの辛さがあります。

片頭痛への予防的な鍼灸

片頭痛に対する鍼灸は、痛みの発現時の抑制よりも、予防が主体になりますが、東洋医学的にはどのように考えられているのでしょうか。

東洋医学的な頭痛の分類の中に「厥頭痛(けつずつう)」というものがあります。この「厥頭痛」とは、末梢の循環障害をともなう頭痛のことです。東洋医学では末梢の血のめぐりが悪いと、本来手足に循環するはずの血が行き場を失い、頭部に集まってしまうと考えられています。つまり、頭部の血流量が過度になり、痛みを引き起こすというわけです。

片頭痛と厥頭痛のメカニズム

施術法としては、手や足などの末梢の循環改善をして、頭部の血管の負担を軽くする方法がとられます。また、同時に、片頭痛と関係の深い三叉神経と関連するツボを刺激していきます。

この三叉神経とは、最も太い脳神経で、その名の通り3本に枝わかれし、それぞれ眼神経、上顎神経、下顎神経と呼ばれています。発症時に眼の奥に痛みや重さを感じるのは、眼神経の影響と考えることができます。

片頭痛の予防に関する鍼のエビデンス

コクラン共同計画という、科学的根拠(エビデンス)に基づく医療情報源を提供している世界的な組織がございます。そのレビューによれば、2016年までに行われた合計4985名に対して行われた、22件のランダム化比較試験を調査分析したところ、片頭痛の予防に対して鍼治療は少なくとも予防薬と同等か、それ以上の効果があると認められ、選択肢として考慮にいれることができるとしています。

つまり、薬と同等の予防効果があるのでしたら、副作用の心配のない鍼灸を利用するほうが、体にはよいと考えられます。ただし、コスト的には服薬の方が安価です。そのため、当院では東洋医学的なセルフケアで通院回数を減らし、経済的な負担を軽くする方法もご紹介しています。

鍼灸が向いている頭痛は

頭痛の治療は、鎮痛効果という面では、お薬を服用する方が手軽で効果も高く、うまく服薬できれば日常生活に支障をきたすことはほとんどないでしょう。

ただ、痛みの予防を求めている方や、お薬の服用に抵抗のある方、お薬が服用できない状況の方は、鍼灸をご検討ください。

慢性化してなおかつ重度の片頭痛の場合、頻度が減少するだけで完全な予防ができないこともございますが、鍼灸は緊張型や軽度の片頭痛には特に向いております。服薬回数を減らし、西洋医学ともうまく付き合いながら痛みをコントロールしていきましょう。

実はこの記事を書いている私も、以前は嘔吐をともなうほどの激しい片頭痛もちでした。自分を実験台にして研究し、今では嘔吐することもありません。毎週末におきていた頭痛も、年に数回かぜをひきそうな時になる程度になりました。以下にその経験を書い記事をご紹介しますので、片頭痛にお悩みの方はぜひご覧ください。

片頭痛持ちの鍼灸師が自分を実験台にして症状を克服した記録

また、当院では、個人の状態に合わせた家庭でできるセルフケア法も施術後にお伝えしています。緊張型頭痛に効果の出やすいツボとその刺激法についてはこちらに詳しく書いております。

肩こり頭痛解消のツボ刺激法

参考文献

  • 『国民生活基礎調査』(厚生労働省,2016年)
  • 『鍼灸臨床最新科学』(医歯薬出版,2017年)
  • 『トートラ人体の構造と機能』(丸善,2004年)
  • 『新版経絡経穴概論』(医道の日本社,2009年)
  • 『黄帝内経霊枢』(日本内経医学会,明刊無名氏本影印)
  • 『症状の起こるメカニズム』(医学書院,2009年)
  • Acupuncture for preventing migraine attacks, Cochrane Database of Systematic Reviews, 2016, issue6.

著者:宮下宗三

鍼灸師。成鍼堂治療院院長、新日本医師協会鍼灸部会学術部長、日本伝統鍼灸学会評議員。著書に『江戸の快眠法』(晶文社)、『鍼灸師・マッサージ師になるには』(ぺりかん社)がある。

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