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下肢の症状へのお灸のやり方

宮下宗三著者:宮下宗三

 更新日:2024.10.21

中国宋代の『鍼灸資生経』という専門書から、今回は下肢の症状のツボをご紹介します。

下肢といっても、太もも、膝、ふくらはぎ、かかとなど、広範囲になりますが、『鍼灸資生経』では、部位別に使うべきお灸のツボが以下のように記載されています。たいへん簡単なツボの選び方なので、ぜひご家庭でお試しください。

『鍼灸資生経』

【書き下し(原文)】

膝以上の病は、環銚風市に灸するに宜し。膝及び膝以下の病は、犢鼻膝関三里陽陵泉に灸するに宜し。足踝以上の病は、三陰交絶骨崑崙に灸するに宜し。足踝以下の病は照海申脈に灸するに宜し。然して須らく其の穴を按じ痠疼する處之に灸すべし。方に効あり。(膝以上病宜灸環銚風市。膝及膝以下病宜灸犢鼻膝関三里陽陵泉。足踝以上病宜灸三陰交絶骨崑崙。足踝以下病宜灸照海申脈。然須按其穴痠疼處灸之方効。)

参考文献:王贄中『鍼灸資生経』京都大学富士川文庫所蔵、寛文9年刊本

【意訳】

膝以上の病には、環跳、風市に灸するとよい。膝及び膝以下の病には、特鼻、膝関、三里、陽陵泉に灸するとよい。くるぶし以上の病には、三陰交、絶骨、崑崙に灸するとよい。くるぶし以下の病には照海、申脈に灸するとよい。ツボを押圧して痛むところに灸をすべきである。まさしく効果がある。

下肢の領域別のツボリスト

『鍼灸資生経』における下肢の領域別の選穴法

以上のように、『鍼灸資生経』では、下肢を「膝より上」「膝および膝より下」「足首から上」「足首から下」の4つの領域に分け、それに合ったお灸のツボが紹介されています。実際のツボの取り方は次のとおりです。

下肢の領域別ツボの選び方

大腿(太もも)の症状

大腿(太もも)のツボ

環跳

太ももの骨の上端から指の幅4本分くらい後ろに取る。

風市

太ももの骨の上端から膝関節を結んだラインの中間点に取る。手を下にさげた時に中指があたる辺り。

膝および下腿(すね・ふくらはぎ)の症状

膝および下腿のツボ1

犢鼻

膝関節の中央の真下にあるスジの上、もしくはやや外側にとる。

注意事項  関節の腫れがひどい時は、家庭では犢鼻への台座つきタイプのお灸は避け、かかりつけの鍼灸師に相談すること。腫脹部にはまた別の灸法や鍼法があるが、専門家でないと判断が難しく、家庭療法の域を出るのでここでは紹介しない。

三里

膝の皿の外側の下角から、手の横幅と同じくらい下。

陽陵泉

膝関節の側面にある骨の出っ張り下斜め前にとる。膝の横には骨の出っ張りがふたつあるが、いちばん外側のもの。

膝および下腿のツボ2

膝関

膝を曲げるとできる内側のシワの端から指の幅3本分くらい下。

下腿の症状

下腿のツボ1

絶骨

外くるぶしから指の幅4本分上

崑崙

外くるぶしとアキレス腱の間

下腿のツボ2

三陰交

内くるぶしから指の幅4本分上

足首から下の症状

足のツボ

照海

内くるぶしの真下

申脈

外くるぶしの真下

ツボ選びのコツ-圧痛点を取る

原文に「ツボを押圧して痛むところに灸をすべき」とあるように、お灸をする際は、ツボの位置を固定化して考えず、基準となるツボの位置からややズレても、圧痛点(押して痛む所)を取った方が効果がでることがあります。

圧痛点が的確に取れるようになると、より効果的なセルフケアができるようになりますので、普段から圧痛を確認しながらツボを取るようにしましょう。