立つ時に痛むタイプの腰痛のツボとお灸のやり方

腰痛と言っても、痛む場所や、痛み方は人によって様々です。同じように、腰痛によいとされるツボも多数存在します。そのため、お灸でセルフケアをするとき、沢山あるツボの中から、どれが自分に合うのか迷ってしまう方は多いのではないでしょうか。

今回は、それらの腰痛のツボの中でも、立つときに痛むタイプの腰痛に特に効果的なものと、そのお灸のやり方をご紹介します。

『新刊黄帝明堂灸経』

出典は中国宋代の『黄帝明堂灸経』に引用されている、張仲文という名医の行なっていた灸法です。ツボの取り方も簡明で、セルフケアとして一人で行いやすいので、ぜひお試しください。

それでは、まずはじめに以下に原文を読んでいきましょう。

【書き下し(原文)】

腰重く痛み、転側すべからず、起坐難く、及び冷痺し脚の筋攣急し、屈伸すべからずを療す。曲踿の両文の頭※、左右の脚四処に灸すること、各三壮。毎灸一脚二火、斉しく艾炷を下す…

(療腰重痛不可転側、起坐難、及冷痺脚筋攣急、不可屈伸、灸曲踿両文頭、左右脚四処、各三壮、毎灸一脚二火、斉下艾炷… )

参考:『黄帝明堂灸経』巻上(京都大学富士川文庫所蔵)

※「踿」は『普済方』での引用では、「踿」の「足(あしへん)」が「月(にくづき)」になっていて、「大腿と下腿の間」のこと。

意訳すると以下のようになります。

【意訳】

腰が重く痛み、体をひねることができず、立ったり座ったりがしづらいもの。及び、冷えて脚の筋がひきつり、屈伸ができないものを治療する。

膝関節を屈曲するとできる横紋の端、左右の脚4ヶ所に、3つずつ灸をする。お灸は膝の内外2ヶ所同時に行う。

以上のように、この灸法は、立ったり座ったりする時に痛むタイプの腰痛や、筋がひきつるために下肢の屈伸ができないものによいわけです。このことから、腰の痛みが下肢の動きと連動する場合に効果があるのではと考えられます。冷えを伴っているものにも特によいでしょう。

では、続けて実際の治療法について解説いたします。

治療法

ツボの取り方

ツボは座って取ります。膝を曲げると、膝関節の内側と外側にシワが寄ります。その内外2ヶ所のシワの先端あたりがツボの位置です。お灸は左右の計4ヶ所に行います。

お灸の種類

台座付きのお灸で、熱量の弱めのものを使う。特に今回すえる場所は、熱の強いものでやると火傷をすることがあるので注意が必要です。

お灸のすえ方

椅子に座った状態で、膝を挟むようにお灸を内側と外側に置き、同時にすえます。

正しいお灸の置き方

お灸を置くときは、お灸の先端が下を向いていると、熱気の上昇により、たいへん熱くなります。

火傷しないように、お灸の細い円柱状の部分の側面が、床に対して水平か、それ以上の角度になるようにしてください。熱さはあまり我慢せずに取りましょう。

誤ったお灸の置き方

たいへん熱くなるため、お灸の先端が下を向かないように。

2個同時にすえるのが難しい場合は、あまりこだわらずに片側ずつやりましょう。

お灸の個数

原文には、お灸を3個すえるとありますが、1個でも十分に熱を感じる場合は、ひとつでもよいでしょう。あまり熱を感じずに終わった場合は、熱を感じるまで、3個を限度に続けてすえてみてください。

まとめ

腰痛のツボはこの他にも沢山ありますが、今回ご紹介したツボは、立ち上がる時に腰が痛む場合や、太ももが痛み、膝の屈伸ができないような状態に特に適応すると思われます。1人でも行いやすい場所にツボがあるのもよいところです。

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著者:宮下宗三

鍼灸師。成鍼堂治療院院長、新日本医師協会鍼灸部会学術部長、日本伝統鍼灸学会評議員。著書に『江戸の快眠法』(晶文社)、『鍼灸師・マッサージ師になるには』(ぺりかん社)がある。古文献にある東洋医学的な養生法を、現代人向けにわかりやすくアレンジしてウェブサイト上で発信している。イラストも手がける。

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