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たったこれだけの魔法 – 養生訓に学ぶ 002

宮下宗三著者:宮下宗三

 更新日:2024.10.2

萬の事、つとめてやまざれば必ずしるしあり

 何かとせわしないこの時代、さまざまな事が効率化され、時短という言葉をよく耳にするようになった。健康法ひとつとっても「たったこれだけ」で、すぐ効果が出る、魔法のような方法が次々と現れていく。

 ただ実際には、そんな「たったこれだけ」の回復魔法は存在しない。

 貝原益軒は『養生訓』の中で、養生を農業に例えている。春に種をまき、コツコツ水をやり、秋に収穫をするように、身体もこまめに手入れして、やっと健康になる。

 生物としての人は、今も昔も不変だ。時代の空気がスピーディーだからといって、病んでしまった心身の回復スピードまで速くはならない。

 益軒はまた「萬の事、つとめてやまざれば必ずしるしあり」とも述べている。全てのことは、努力して続ければ必ず効果があるという意味だ。

 つまり、健康になるにはどうしても一定期間の努力を続けることが必要になる。とは言え、やはり「たったこれだけ」は魅力的だ。何をするにもできるだけ楽はしたい。

 ではどうすればよいか。養生を長期間続けるという部分は、どうしても省けない。なので、まずは健康になるために要する期間を短くするのはあきらめる。

 その上で、養生の内容の方は自分とっての「たったこれだけ」にする。 特に心身ともに元気のない人が、何かをしたい場合、物事の細分化は必須だ。自分にとっての負担にならない「たったこれだけ」にたどり着くまで、できるだけ小さく細かく短くする。そして無理なくそれを積み重ねていく。

たったこれだけの作り方

 例えば、食べ過ぎが気になる人は、急に全ての食事量を減らさず、三食の中の一食だけ軽めにするとか、毎日が大変なら週に二回だけにするとか、間食の回数だけ減らすとか、自分と相談して妥協案を模索する。

 あとは「萬の事、つとめてやまざれば必ずしるしあり」という言葉を信じて、植物に毎日少しずつ水をやるように、焦らずゆっくり心身の変化を待ってみよう。