市場に通りすがりの中年女性が、熱中症で倒れていた意識不明の老人に対し、気付けのツボを押して意識を回復させたというニュースが2011年7月22日付けの『武漢晩報』という中国の新聞に掲載されていました。めずらしい例なので紹介します。
以下がその掲載内容の一部です。
劉女史はまず老人を平らに寝かせ、その後人だかりを分散させ、老人の人中穴を症状を解消するために押し始めた。
しかしながら老人の状態は緩解されず、劉女史はやはり同時に両手の親指とひとさし指の間にある合谷穴を押すべきであると気づく。3つの穴を同時に押すことで効果が得られるのだ。
「これは誰か押すのを手伝ってくれる人が必要で、隣にいたふたりの学生さんのおかげでした。」
手伝った学生は近くの中学から来ていた劉さんと郭さん。劉女史が簡単な手本を見せたあと、彼らが老人の合谷穴を押し、劉女史は老人の人中穴を押し続け、約8分後に老人は意識を取り戻した。
2011年7月22日『武漢晩報』 訳:宮下宗三
これは救急車が到着するまでの一幕のようですが、その後老人は病院で検査を受け、問題ないようなのでそのまま迎えに来た家族と帰宅したとのことです。
ここで登場する人中というツボですが、意識を失った人を刺激する経穴として医学古典に登場します。
例えば、明代の医学古典である『類經図翼』巻八にある水溝の効果に「不省人事(意識不明)」と記載されていたりします。ちなみに、水溝というツボの別名が人中になります。
実際の所、意識を失った人がいたらまずは通常の適切な救命処置を救急車が到着するまでの間にしなければならないですが、いざというときのサバイバル術のひとつとして知っておくとよいかもしれません。