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腱鞘炎・バネ指に対する鍼灸治療

宮下宗三著者:宮下宗三

 更新日:2024.5.17

腱鞘の役割と腱鞘炎

腱鞘には、腱の摩擦を和らげる働きがある

腱は筋肉を骨の表面にくっつける役割があり、腱と筋肉と骨が連動して、関節は動きます。その際、体の場所によっては腱のスムーズな動きを助けるために、腱鞘という器官が存在します。この腱鞘は、線維鞘と滑液鞘で構成され、腱の摩擦をやわらげています。

腱鞘炎とは

腱鞘炎とは、腱鞘が炎症によって分厚くり、関節の滑動性が低下してしまった状態です。そのため、関節がスムーズに動かせなくなったり、動かす際に痛みを生じてしまいます。

腱鞘炎の種類と原因

腱鞘炎・バネ指の原因

腱鞘炎・バネ指の原因

腱鞘炎は、手首の親指側に起こるドケルバン病、指の腱鞘炎であるバネ指(弾発指)などがあります。

両者に共通する原因は、まず手の酷使があげられます。一方で、日常生活やお仕事で手をあまりよく使わないにも関わらず、腱鞘炎になる場合もございます。

特に、女性の更年期、妊娠、出産期に発症することが多く、女性ホルモンが関わっている可能性が考えられています。また、バネ指の場合は、糖尿病、リウマチ、透析中の方に出現することがあるようです。

ドケルバン病

ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)は、手首の親指側の、伸筋腱腱鞘の第1区画で生じます。手首の親指側の側面にある骨の出っぱり(橈骨形状突起)が、手首を動かすと痛んだり、圧痛や腫れがみられます。

セルフチェック法

アイヒホッフテストのやり方

アイヒホッフテスト

1.親指を握り込む

2.そのまま下に向けて曲げる

バネ指(指の腱鞘炎)

バネ指は、指の付け根の関節付近の屈筋腱に発生する腱鞘炎です。指の関節の手の平側が痛み、腫れや圧痛がでることもあります。バネ指と呼ばれるのは、指を屈伸させる時に、弾発現象という、縮んだバネが一気に伸びるような動きになるためです。

成鍼堂における腱鞘炎・バネ指の鍼灸治療

成鍼堂で行っている、腱鞘炎やバネ指の鍼灸治療は、以下のように全身と患部の2つのパートで構成されています。

全身を整えなければいかないわけ

鍼やお灸は、疼痛の緩和や、抗炎症作用があることがよく知られています。そのため、腱鞘炎やバネ指の鍼灸治療というと、手や指にばかり鍼をするとお思いの方も多いでしょう。もちろん患部への鍼は行いますが、それだけでは問題は解決しません。

腱鞘炎に対する鍼灸治療の考え方

腱鞘炎に対する鍼灸治療の考え方

上述した腱鞘炎の原因には、指の酷使以外に、女性のホルモンバランスの崩れが考えられています。つまり、全身的な問題のひとつとして、手に影響が及んでいると考えられます。

そのため、腱鞘炎やバネ指の方には、男女関わらず、全身を整える施術を行うようにしております。

実は私が駆け出しの頃は、患部への鍼をメインにした施術を行っていたのですが、あまり成績はよくありませんでした。試行錯誤の末、ある時から患部への刺激に加え、全身への施術を行うようにすると、治療成績が格段にあがりました。

腱鞘炎・バネ指の患部への鍼灸治療法

ドケルバン病の場合は、短母指伸筋腱と長母指外転筋腱を皮膚の上から触って確認し、狙いを定めて鍼を行い、炎症や緊張を取る手技を加えていきます。また、バネ指の場合は、指の関節にある数ミリの太さの腱鞘を探り、ある特定の部位に鍼とお灸で刺激を与えていきます。

また、上肢全体の循環をよくするために、肩関節、肘関節の周辺や、前腕のこわばりや圧痛をおうかがいしながらしっかりと把握し、緊張を緩めていきます。