腱鞘の役割と腱鞘炎
腱は筋肉を骨の表面にくっつける役割があり、腱と筋肉と骨が連動して、関節は動きます。その際、体の場所によっては腱のスムーズな動きを助けるために、腱鞘という器官が存在します。この腱鞘は、線維鞘と滑液鞘で構成され、腱の摩擦をやわらげています。
腱鞘炎とは
腱鞘炎とは、腱鞘が炎症によって分厚くり、関節の滑動性が低下してしまった状態です。そのため、関節がスムーズに動かせなくなったり、動かす際に痛みを生じてしまいます。
腱鞘炎の種類と原因
腱鞘炎は、手首の親指側に起こるドケルバン病、指の腱鞘炎であるバネ指(弾発指)などがあります。
両者に共通する原因は、まず手の酷使があげられます。一方で、日常生活やお仕事で手をあまりよく使わないにも関わらず、腱鞘炎になる場合もございます。
特に、女性の更年期、妊娠、出産期に発症することが多く、女性ホルモンが関わっている可能性が考えられています。また、バネ指の場合は、糖尿病、リウマチ、透析中の方に出現することがあるようです。
ドケルバン病
ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)は、手首の親指側の、伸筋腱腱鞘の第1区画で生じます。手首の親指側の側面にある骨の出っぱり(橈骨形状突起)が、手首を動かすと痛んだり、圧痛や腫れがみられます。
セルフチェック法
アイヒホッフテストのやり方
1.親指を握り込む
2.そのまま下に向けて曲げる
バネ指(指の腱鞘炎)
バネ指は、指の付け根の関節付近の屈筋腱に発生する腱鞘炎です。指の関節の手の平側が痛み、腫れや圧痛がでることもあります。バネ指と呼ばれるのは、指を屈伸させる時に、弾発現象という、縮んだバネが一気に伸びるような動きになるためです。
成鍼堂における腱鞘炎・バネ指の鍼灸治療
成鍼堂で行っている、腱鞘炎やバネ指の鍼灸治療は、以下のように全身と患部の2つのパートで構成されています。
全身を整えなければいかないわけ
鍼やお灸は、疼痛の緩和や、抗炎症作用があることがよく知られています。そのため、腱鞘炎やバネ指の鍼灸治療というと、手や指にばかり鍼をするとお思いの方も多いでしょう。もちろん患部への鍼は行いますが、それだけでは問題は解決しません。
上述した腱鞘炎の原因には、指の酷使以外に、女性のホルモンバランスの崩れが考えられています。つまり、全身的な問題のひとつとして、手に影響が及んでいると考えられます。
そのため、腱鞘炎やバネ指の方には、男女関わらず、全身を整える施術を行うようにしております。
実は私が駆け出しの頃は、患部への鍼をメインにした施術を行っていたのですが、あまり成績はよくありませんでした。試行錯誤の末、ある時から患部への刺激に加え、全身への施術を行うようにすると、治療成績が格段にあがりました。
腱鞘炎・バネ指の患部への鍼灸治療法
ドケルバン病の場合は、短母指伸筋腱と長母指外転筋腱を皮膚の上から触って確認し、狙いを定めて鍼を行い、炎症や緊張を取る手技を加えていきます。また、バネ指の場合は、指の関節にある数ミリの太さの腱鞘を探り、ある特定の部位に鍼とお灸で刺激を与えていきます。
また、上肢全体の循環をよくするために、肩関節、肘関節の周辺や、前腕のこわばりや圧痛をおうかがいしながらしっかりと把握し、緊張を緩めていきます。